借金の踏み倒し 時効にする方法と罪になるのかを解説
3年前、とある女性会社員のBさんは学生時代の友人たちと海外旅行をしようという話をしていました。
しかしBさんは浪費家なので海外旅行費用がすぐに捻出することが出来ず困っていました。
友人に「お金がない」と言うのが恥ずかしかったし、何より久々の友人たちと旅行が出来ないことが嫌でした。
どうにかお金を調達しようと色々探して辿り着いたのが消費者金融でした。
最初は躊躇いましたが、旅費の支払いが差し迫っていたし、CMなどでお馴染みの大手の消費者金融だったから安心だろうと旅費と
現地で買い物や遊ぶためのお金を合せて50万円の借り入れをしました。
そのおかげで旅行も出来て楽しいひとときを過ごし、今後は浪費せずに半年で完済しようと心に誓いました。
しかし身についてしまった浪費癖はなかなか抜けず、気がつくと返済をしないままになっていました。時々消費者金融から電話やはがきで返済の催促があったのですが、ちょうど手持ちがない時ばかりでしたので「いつかまとめて返すから」と無視に徹していました。
しかし1年も経つとさすがに不安になってきたBさんは消費者金融の店舗に行きました。
すると借金は利息や延滞金を含め70万円に迫る額になっていたのです。
頭が真っ白になったBさんは「今は持ち合わせがない」と言って店を出てそのまま逃げるように帰って行きました。
怖くなったBさんはその後2年、現在に至るまで再三に渡る催促を見ぬふりをしてきました。
Bさんは現在、この借金以外に借金があるわけでもなく、相変わらず貯金はないですが普通に生活をしています。
そして「もうこのままなかったこと(時効)にならないかな…」という考えがBさんの頭にずっとあるようです。
借金の踏み倒し 時効は何年?
この度Bさんが借金をしている消費者金融は「商取引」としてBさんにお金を貸しており、商取引上の時効(厳密には消滅時効と言います)は5年で成立するとされています。
Bさんの場合でしたらあと2年!と思うでしょうが、時効が成立するためにはいくつかのルールや条件があります。
借金の時効とはどんな条件のもとに成立しているかを理解している方は意外と少ないでしょう。
そもそも時効はなんのために存在しているのかもここではおさえておきます。
時効は、長い期間続いた債権債務の関係を不安定な状態で存在させてはいけない、もうこのままの状態でいいではないか(長い間返済していなかった・請求しなかったのだからもうこのままでいいじゃないか)、権利をいつまでも行使しない(時効まで本腰を入れて請求しない、権利の上に眠っていた)者は保護しませんという考えから存在します。
無期限に債権債務が存在し、それによっていつまでも永劫に借金の危機に晒されている状態をよしとしないのです。
個人間のお金の貸し借りの時効は10年ですが、消費者金融から借り入れ(商取引)をしていたBさんの場合時効は5年です。
この時効が成立するためには、絶対条件として「消滅時効期間の経過」と「時効の援用(次の項目で詳細を説明)」が必要となります。消滅時効に到達するまでに数々の問題(裁判上の請求や債務の承認などの時効の中断事由など。次の項目で詳細を説明)がありますが、ここをクリアすれば時効は成立します。
借金の踏み倒し 方法は?
民法第147条(時効の中断事由)というものがあり、今まで時効に向けて進んでいた時を中断させる行為があります。
その内容は、「請求」「差押え、仮差押え又は仮処分」「承認」というものがあります。ここでは特に注意すべき「請求」と「承認」についてお話します。
「請求」とは裁判上の請求のものと、債権者(消費者金融)からの催告のものと2パターンあります。
裁判上の請求は当然に時効が中断しますが、債権者からの請求は請求から6ヶ月以内に訴訟や支払い督促(裁判所のタッチがある手続き。裁判上の請求に移行)をしなければ時効は中断しないとされています。
これは、今ちゃんと払えば訴えずに穏便に済ませてあげますよという最終通告的なものや、時効ギリギリになって債権者サイドが時効になってたまるか!しかし裁判手続きするにはもう時間がない!という時に使ったりします。
後者の場合は時効の引き延ばし(6ヶ月以内に法的アクションを起こせばの話ですが)のような意味合いがあります。また、言った・言わないの水掛け論を防止するために内容証明をもって催告をするのが一般的です。
そしてもうひとつは「承認」です。借金があること・返済義務があることを債務者が認めることです。
例えばBさんが消費者金融の再三の請求に対して「必ず返すから」と返済の意思があるような発言をしたり、「全く返さないのも悪いし、1000円くらいは返しておこうか…」とうっかり1000円を返済したりするとします。それによって「Bさんは自分の借金があることを認めた(債務を承認した)」という認識になり、消滅時効が中断することになります。こうなってしまうと時効の進行はまたスタート地点に戻ることになります。
そして間違った認識をしている人も多いのですが、
借金は時効が来たら勝手に消えるものではありません。
ちゃんと条件を満たさないと債務は残ったままになります。これを「時効の援用」と言います。「時効が来ました」という主張を債権者にするのです。
この主張は一般的に内容証明で行います。因みに時効期間が過ぎていても債務者が時効の援用をしていなければ債権者は返済を請求することが出来ます。ここで何からの中断時効(請求や催告、債務の承認など)があれば当然時効は中断してしまいます。
時効の経過だけで喜ぶのではなく、その後の手続きをしなければ意味がありません。また、消滅時効の期間が過ぎたに時効の援用をしていない状態でうっかり返済してしまうとそれも債務の承認になってしまい、時効が中断、消滅時効期間はリセットされてしまいます。
時効期間が過ぎたのに返済してくれるんだ!という債権者の期待を裏切ってはいけない(信義則)という精神からこの考えがきています。
借金を踏み倒したい!と考えている方は少額であってもひたすら返済はしない(債務の承認はしない)、消滅時効期間が経過したらすぐに時効の援用をすることでしょう。
借金の踏み倒し 罪になる?
1・2章を通じて借金の踏み倒しは可能であることが分かりました。
時効や時効の援用は法律によって決められていることですし、罪にはなりません。
しかし、場合によっては金融取引上の事故を起こしたという扱いになり、この先何年かクレジットカードや消費者金融・銀行などから借り入れをすることが出来なくなります。
この踏み倒した情報は個人信用情報に事故として記載されることがあります(信用情報機関によって運用が違うことがあります)。貸したお金を踏み倒すような人にはお金は貸せません!ということになります。
しかし今回のBさんの場合は消費者金融からの借り入れで、消費者金融はJICC(日本信用情報機構)に加盟しています。なんとこのJICCは時効の援用をすると個人信用情報を削除するのです(完済扱いで終了)。
むしろ、時効の援用をしていないとずっと「延滞」として情報が残り続けて他の金融関係の取引に影響が出てしまいます。借金の踏み倒し(消滅時効による時効の援用)は、メリットがあってもデメリットはありません(気持ちの上の話は別ですが)。
また、時効の援用の手続きは司法書士や弁護士などの専門家に手伝ってもらう方が費用はかかりますが確実ですしトラブルも防げます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
時効の援用について知ってしまうと「簡単!自分も踏み倒してしまおう!」と考える方もいるでしょうが、早々簡単に出来ないのが事実です。
消費者金融もプロです。時効の中断を知らないわけがありません。
このBさんの場合はまだ裁判上の請求(債権者からの催告はあるが裁判手続きに移行していない)もなく、債務の承認もしてない状態で3年が経過しています。このまま2年、何事もなければ時効期間を経過後に時効の援用をして晴れて無借金の身です。
法的に認められている制度ですので、時効を賢く使うのもありかもしれませんね。