団地は耐用年数が迫ると建て替えか退去しなければならない?
あるところに社会人3年目になるEさんという男性がいます。
Eさん自身は就職を機に独り暮らしを始めていて、住んではないのですが、実家の団地について気になっていることがあるのです。
Eさんの実家はEさんが12歳の頃に両親が購入した団地なのですが、その時点で既に築20年経っており、今では築30年を優に越えています。
Eさんの両親はこの家を気に入って暮らしているのですが、この先もずっとここで過ごすのか?築年数がかなり経っているが建て替えはあるのか?
建て替えの際は退去させられてしまうか?もう決して若くない両親のことを考えるとEさんは不安でした。
ここではEさんの不安を軽くするため、団地の耐用年数や立て替えの必要性などについてまとめます。
団地の耐用年数は?
あらゆるものには「耐用年数」というものがあり、単純に「物が繰り返し使用に耐えられる年数」と、税法上の減価償却を行うための「法定されている使用可能年数」があります。
後者の耐用年数と物の寿命はリンクせず、耐用年数を過ぎても充分に役目を果す物もたくさんあります。
そして団地の耐用年数は構造や使われている素材によって違いはありますが、法定上の耐用年数は約20年から50年と言われています。税法上の考え方だと、この耐用年数を経過すると団地本体の強度という意味以外にも経済的価値がなくなるということになります(減価償却)。
また、日本建築学会では、鉄筋コンクリート造りの集合住宅の耐用年数を、優良・高品質であれば60年から100年以上としています。
しかし何の手入れをせずにこの耐用年数というわけではなく、然るべきメンテナンスをマメにすることが前提になっています。
そして一般的には団地が建て替えを検討する築年数は築40年から50年経ったくらいからと言われています。耐用年数的にもそのあたりから建て替えの検討を開始していかないといけないかもしれませんね(建て替えに着手するまでに話し合いや手続きがあることを考えると)。
ちなみにEさんの実家の場合、今は大丈夫でもあと10年くらい経ったら建て替えの話しが出てくる可能性があるでしょう。
団地は建て替えが必要?
団地やマンションは戸建てと違い、1棟の建物を数個に区分して所有する形態が一般的です(区分所有)。
戸建てなら所有者単独(共同所有などもありますが、ここでは割愛します)の意思で建物に手を加えたり処分したりすることが出来ますが、団地やマンションはそうは行きません。区分所有者は、団地の「自己の所有区分」のみの自由が許されており、建物本体をどうこうしようとするときは団地全体の意思決定が必要になります(団地は居住者みんなのものだから、団地のことはみんなで決めようということ)。
その意思決定の根拠には「区分所有法」というものがあり、区分所有者の5分の4以上の賛成がないと建て替えをすることが出来ないとされています。
5分の4以上というのはとても重たい決議の数値であり、実際に可決されることはかなり難しい条件です。
理由としては建て替えには大きなお金が必要となるので区分所有者たちで積み立てることになるのですが、その費用が捻出することが出来ないという理由で立て替えを反対する方が多いということがあります。
しかし、そんな事情があっても建物の劣化は待ってくれません。1981年より以前に建てられた団地などは新耐震基準が適用されていないため、新基準を取り入れて建て替えをしないと今後起きるかもしれない大規模な災害や震災に団地が耐えることは出来ず崩壊するかもしれません。地震大国と言われるお日本で震災に築年数の経った団地で生き抜くには、建て替えの時期を見誤らずにいることが1つでしょう。
団地は退去しなければならない?
もし団地の住民の5分の4以上の賛成を得て建て替えが決定した場合、速やかに建て替え組合を設立し、権利変換計画を作成します。
そして権利変換計画が承認されたらいよいよ建て替えに関する動きを取ることになります。
建て替え中はもちろん住むことが出来ませんので仮住まいに移ることになります。
そして建て替え決議が成されてもなお建て替えに反対している区分所有者ももちろん存在しています。そんな反対者に対して他の区分所有者たちは反対者の自己の持ち分の売り渡しを請求することができます。
どうしても建て替えに賛成できない場合はこうして他の建て替え賛成の住人に自己の持ち分を売り渡して反対者は退去しなければいけません。
他には、耐用年数が到来する団地の建て替えはしなくていいの?という心配点ですが、耐用年数が到来した団地に住んでいても違法にはなりませんので建て替えることなくそのまま住み続けることは可能です。
ただ、定められた年数をオーバーしそうだと安全性などに不安を感じる方もいますよね。そういう方はタイミングを見て早々に引っ越しをしている方が多いです。資産として価値はありませんが、建て替えにかかる費用や安全性を考えるとそれでもいいという考え方もあります。
しかし耐用年数が到来する前に建て替えの議案が出る団地やマンションがほとんどでしょう。
まとめ
これらの情報を踏まえて、Eさんは今後のことについてご両親と話し合うことにしたようです。
今は両親とも健康体で問題はありませんが、建て替えの話しが出るかもしれない数十年後には定年して職もないだろうし、加齢故に健康体とは言いづらい状況になっているかもしれません。
そんな状況で建て替えだ退去だなんて話しになることを考えると、今後の方針を今のうちに決めておこうと思ったのです。
家は人が暮らしていく上で大切なものであり、命を預けるものです。
面倒だと思わずに、建て替えや耐用年数など基本的なことはしっかり押さえておくと安心ですね。